サンフランシスコ 3

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<メール>サンフランシスコ通信 3

Wed, 04 Dec 1996 01:18:00 -0800

その後、岡部さんといっしょに市立中央図書館の館長、情報公開運動のNPO代表、サンフランシスコ州立大学コンピュータサイエンス教授、同大学市民マルチメディア講座技術主任と会い、話を聞きました。

中央図書館は、今年オープンしたばかりの最新の市立図書館です。100年の伝統を持つ図書館が約4万m2、蔵書 100万、政府刊行物500万、閲覧用コンピューター端末300(スタッフ用は400)を誇る超近代的図書館に変身し、市民はもちろん全米、いや世界の注 目を集めています。利用者は飛躍的に増加し、インターネット経由の利用者も26の分館全体の利用者を追い抜くなどすばらしい成果があがっていますが、一方 で旧館に比べて蔵書がさほど増えていないこと、図書カードを廃止したこと(結局は一部存続)などから、一部の市民からは批判も出ているようです。ドーリン 館長は、自らパソコンでプレゼンテーションしながら説明してくれましたが、21世紀を見越した新しい図書館の方向として、コミュニティ、コミュニケーショ ン、コラボレーションを上げ、それに向けて今後も改革を進めていきたいとのことです。なにやらメディアテークで考えてきたことと符合するところが大きく、 館長のとつとつとした語り口に大きくうなずきながら話を聞きました。

実はこの前に情報公開運動の事務所で、図書館の蔵書問題について批判する運動を起こしている(奥さんには反対されたそうな)という話をきいたばかり、またまた対立する関係にある人を連続して訪問することになりました。
偶然だとは思いますが、これがアメリカ社会なんだなということを痛感するひとまくでした。NPOの事務所というのはパソコンが並び普通の会 社と一見なんの変わりもありません。ビルをもっているNPOもあるし、労働組合だってあります。日本では、ボランティアとNPOがセットになって語られる ことが多いですが、NPOはあくまで非営利(収入をすべて事業に投資する)組織のシステムでしかありません。もちろんこれが市民のボランティア活動を支え る重要なシステムでもありますが、それだけではありません。中には会長が自家用ヘリコプターを買って批判を浴び、事業の大幅縮小を余儀なくされたNPOも あるそうです。

サンフランシスコ州立大学のcollege of extended learning部門の施設であるダウンタウンセンターには、マルチメディアスタディープログラムというのがあり、市民向けにコンピューター活用に関する入門から作品制作に至るまでのさまざまな講座が行われています。
http://www.cel.sfsu.edu/msp/MSP2.html
ハードやソフトは企業の協力も大きいようです。今のところMACが3に対してWINDOWSが2という構成でした。技術主任のトッド氏は映画作りをやって いた人ですが、マルチメディアの可能性に惹かれこの仕事をしているようです。現在、大学と市と地元放送局のKQEDの三者の共同事業として新しいマルチメ ディアセンターの建設を計画中です。その意味でメディアテークにはかなり関心を持ったようです。メディアの浸透によってセンターは必要なくなるのではない かという問いかけには、コーヒーショップがあることを考えれば、コミュニケーションのための場は絶対なくならないと言い、またパソコンが本来個人利用を想 定して設計されていることの指摘については、肯定するとともに今後はゲームソフトのように数人が同時に参加できるソフトやディスプレイ、インターフェイス の検討が必要だと言っていました。これはすごく面白いと思います。メディアテークのハードを考える上で重要なテーマのひとつになると思いました。

さて、本当に充実したサンフランシスコ視察をコーディネートして下さった岡部さんは、最近の著書「インターネット市民革命」の刊行後ひきも きらぬ日本からの視察の相手が大変だとおっしゃってました。そうですよね、岡部さん、、、(実はこのメールは岡部さんにも送っており、ちょっとプレッ シャーなのです。先日の外国人労働者のパーティでのショックについては、あれはあくまで外国人同士が自主的に行っている相互扶助であり、まったくの誤解だ とご指摘いただきました)また、著書で紹介したところには次々と日本人が訪ねてきて、ただでさえ忙しい彼らを困らせているとのことです。私もその一人なの ですが、原稿の締め切りや、そうした問題の対処に忙しい中親身になってサポートしてくださった岡部さんにはお礼の言葉もありません。

これもメディアテークが目指している理想の力だと思っています。
余談ですが、レイバープロジェクトのゼルツァーさんの日本人の奥さんである和美さんは自分でもコミュニティーテレビの番組を持っていますが、その番組のた めにメディアテークプロジェクトについてのインタビューを受けました。といっても、収録場所はご自宅、インタビュアーは奥さんの和美さんです。しかもすべ て日本語。いつの日かサンフランシスコのCATVで放映されるでしょう。日本ではもちろん世界でも始めてのプロジェクトだということでとても好意的に取材 してくださいました。また、サンフランシスコのアジア美術館で情報テクノロジーを担当してる方をご紹介くださいました。その方は、メディアテークはうまく するとアップルコンピューターの支援を受けられるかもしれないと話しているとのこと、こちらではお会いできなかったので帰国後あらためてメディアテークの 資料をお送りすることにしました。

というわけで、1ヶ月にわたる旅行は終わります。今夜はたまたま見つけたジャズをライブでやっているレストランで夕食。お客が飛び入りでピアノをひくなど とてもリラックスした家族的な雰囲気の店で、心温まるひとときを過ごしました。その客ははっきりいって下手くそで、プロの人たちは苦笑いしてましたが、彼 を傷つけないようフォロウする彼らにアメリカ人の人間関係の作り方のある側面を見たような気もします。
各地で受けたメディアテークへの賛辞にも確かに外交辞令はあったでしょう。しかし、これを実現できれば間違いなく世界の注目を集める画期的なものになると いう確信を持つことができたのも事実です。仙台市民はそれに向けてすでに一歩を踏み出しています。メディアテークの前にはまだまだ多くの課題が山積してい ますが、このチャンスを逃さないよう、人々の熱意と英知を結集するため努力するしかないことをあらためてかみしめています。
お忙しい皆さんに、長文の上わけの分からない写真までくっついたメールをお送りしご迷惑をおかけした方も多かろうと申し訳なく思っていますが、今の私の心 境をお察しいただき、今後ともメディアテークの実現に向けてお力をお貸しいただけるよう、この場を借りてお願いする次第です。
無事帰国の節にはあらためてごあいさつしますが、海外からの通信はこれが最後となります。長期間にわたりおつきあいいただいたこと、数々の励ましのメールをちょうだいしたこと、心からお礼申し上げます。

ありがとうございました。

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スタンド式端末も多い
特にグラフィックなインターネット端末等はこのようにして回転率を高めることをねらっている。

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1階が、全体のブックディテクションを管理

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貸し出し、返却、他館図書サービスなどの窓口。レファレンスとは切り離される。

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ダウンタウンセンター 研修室

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ダウンタウンセンター Robert Todd氏

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岡部一明さん SF在住のジャーナリスト
最近の著書は「インターネット市民革命」

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merry christmas!


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<データ>サンフランシスコ市立中央図書館

CIVIC CENTER SANFRANCISCO CALIFORNIA
94102
http://sfpl.lib.ca.us/

応対してくれた方

館長(当時) Kenneth E. Dowlin 氏

概要

旧館のとなりに1996年4月新しく開館。地下を含め7階建て。総床面積35000m2、図書100万冊、政府刊行物500万 冊、マイクロフィルム5万、定期刊行図書バックナンバー25万、購読5300、AV資料(ビデオ、CD他)2万、パソコン端末700台(内400台はス タッフ作業用)、閲覧席2043人、その他会議室(延べ500人)、ホール、研究室等。
建設・備品費は、市債1億400万ドルに加え、サンフランシスコ図書館財団が募金した3000万ドルでまかなわれる。
募金の結果は館内のコレクションに反映され、ゲイ・レズビアンセンターなど、さまざなコミュニティの情報センターとしても機能している。新館開館後、利用者は3倍、利用登録カードは4倍強に増加。

サービス

(abc順)
Art & Music
Audio-Visual
African American Center
Blind Service Center
Book Art's & Special Collections
Browsing Library
Buisiness & Thechnology
Cafe
Children's Literature & Services
Chinese Center
Deaf Services
Environmental Center
Filipino American Center
Friends of the Library Store
Gay & Lesbian Centaer
General Collections & Humanities
Government Information Center
International Center
Jobs & Careers Center
Magazines Newspapers
Patent & Trademark Center
Project Read
San Francisco History
Teen Service

この活動の幅の広さは、図書館というより、日本で言うところの生涯学習センターと市民センターの機能をまるごと飲み込んだ感がある。分館は、26館。

情報端末

すべての端末が、館内データベースとインターネット(テキストベース)に繋がり、一部がグラフィックや、マルチメディア、視聴覚障害者などに対応してい る。閲覧席にはネットワークのジャックが用意され、パソコンを持ち込んでの閲覧を可能にしている。現時点において先端的とは言え、21世紀の情報環境を考 えると当然の設備と思われるが、このための投資で図書がおろそかになったのではないかという批判も起きているのも事実である。

※シティーリンクブリッジ構想

図書館が中心となって、サンフランシスコの図書館、大学、企業、学校、自治体、放送局、CATVを結んだネットワーク作りを進めている。州立大学が実施し ているダウンタウンセンターでの社会人向けコンピュータ教育、学生や教員の地域社会でのメディア支援活動等は、このような地域ネットワークを形成していく 上で、きわめて重要な意義を持つ。このような活動のひろがりがあってこそ、逆に公共図書館の機能が深められていくと言える。

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館長室で

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ゲイ・レズビアンセンターの表示

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各閲覧机に、ネットワークの差込を用意

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館内ツアーのボランティア。このようなボランティアが各部門で活躍。ボランティアへのサポートシステムもしっかりしている。

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分館


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<入手資料>

中央図書館,

FORT MASON CENTER,

レイバービデオ,

市民アクセスチャンネル,

ダウンタウンセンター,

エクスプロラトリウム,

サンフランシスコ近代美術館,

その他,

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