報告にあたって

1 背景


(仮称)せんだいメディアテーク建設構想は、かねてから建設の要望があった市民ギャラリー、市民図書館などの機能を「メディアテーク」の名の下に一体化し、単なる複合施設にとどまらない21世紀にふさわしい生涯学習推進の市民施設を建設するものである。
一方、その建築案は公開設計競技により伊東豊雄建築設計事務所案が選出され、建設に向けて詳細が詰められている。伊東案の選出過程やその後の計画案の詳細決定などは各段階で市民に公開され、意見交換・協議がなされ、了解を得ながら現在にいたっている。
しかしながら現在までのところ、この施設がどのような活動を行い、市民がどう利用するかといった具体的なイメージについて、市民と事業推進者間で合意が取 れているとはいえない。市民ギャラリー、市民図書館といった従来からのサービス概念を統合し、それに余りあるメディアテークならではの活動・利用と意義に ついて、双方が魅力を感じるイメージをいまだに持ち得ていないのである。
そのことの要因として、本事業がメディアテークとして「基本構想」を持たず、さまざまな事業(建築設計コンペ、各種市民懇談会等など)を先行してきた経緯 が挙げられる。コンペでも「メディアテーク構想」を求めたが、入選案を含め、このことに関しては的確な答えは出なかった。
このような特殊事情があるにせよ、せんだいメディアテークの意義は「新しい時代の公共施設の在り方」を先見的に示さなくてはならないという難しさがあるこ とも否めない。また、新しいジャンルの施設の概念だけでなく、いままで存在しなかった「公共サービス」をはっきり定義づけなくてはならない。このようなこ とを背景に検討委員会の討議が始まった。


2 目的


「(仮称)せんだいメディアテークプロジェクト検討委員会」の目的は、建築計画採用決定以降に事業者によって作成された『事業計画素案』の内容検討、委員会の開催と同時並行的に進められる「建築基本設計計画」への助言、「メディアテーク概念」の検討である。


3 経過


全4回開催した委員会、および正式な委員会の前後に任意に行なったヒヤリングでは、委員会開催の主旨に沿い、適宜検討内容が挙げられ、回を追う毎に問題点 が明確化され、深化されていった。その中で「建築基本設計計画への助言」は設計作業の進捗にしたがって漸次なされ、すでに計画案の中にその成果が反映され ている。 「事業計画素案の検討」については、複合した施設の運営・活動範囲の検討、施設サービス概念の調整・了解等など未解決な諸問題が密接に結び付いており、ま た一般解としてのメディアテークではなく、仙台固有の市民生涯学習施設としての希求が審議の過程で事業者、市民団体などの間で高まるなど、前提条件への フィードバックも含めて協議検討の相当部分を費やしたが、現段階での具体化・確定は困難との結論に達した。
「メディアテーク概念」の検討は討議の過程で出された項目と結果を提示したが、これも上と同じように、仙台市固有の具体的な利用・活動イメージの中で、事 業者・利用者双方が了解を取っていくものと判断し、上の事業計画と同じく事業主体、実際的な利用主体双方による具体的な活動を通じて引き続き検討を要する ものとした。


4 報告書の構成


本報告書では本委員会散会後、緊急に実行すべき最重要の事項を「提言」した。
つぎに「検討委員会討議結果報告」として事業計画素案の検討、メディアテーク概念の検討、運営・組織の検討、建築計画の検討をまとめた。
検討委員会開催の要項、次第、討議内容の要約、「(仮称)せんだいメディアテーク設計競技応募要項」は参照資料として添付している。
なお、本報告書の補足資料として、検討委員会の討議内容全記録、同要約、および関連施設、事業等の資料をまとめている。(「資料篇」参照)