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はじめに

2010年度は、メディアテークや仙台にとってだけでなく、日本、そして世界にとっても忘れることのできない年度となりました。2011年3月11日に私たちを襲った巨大な災害によってお亡くなりになった方々にあらためて心からお悔やみを申し上げるとともに、被害にあわれたみなさまにお見舞いを申し上げます。

さて本年度はメディアテークの開館10周年を迎える年でもありました。わたしたちはこの1年を、これまでの10年を振り返りつつ、次の10年のメディアテークの役割を多くの利用者のみなさんと見直す年にしたいと考えました。メディア、アート、映像の3分野をベースに企画全体を3本の柱にまとめ、それぞれの社会的役割を検証しつつこれからのメディアテークの指針を明らかにしようとするものでした。

ひとつめはメディアを軸とする連続トークセッション「コミュニケーションの未来へ」。メディアやコミュニケーションの現場で活動し発言する方々とともに、私たちひとりひとりが、また社会全体が取り組むべき、メディア環境の保全に向けた課題を明らかにしようとするものでした。ふたつめは展覧会やワークショップなどアートを軸とする「いま、バリアとはなにか」。小山田徹と藤井光による6階ギャラリーでのインスタレーションを中心に、館内の空きスペースはもちろんガラス外壁や図書館にまで滲出するようなアートプロジェクト、シミュレーション技術を応用しつつ伝統芸能に挑戦するワークショップなどを行いました。そしてみっつめは映像を軸とする上映プログラム「ことばをこえて――映像の力」。映像で何を、どのように語り、伝えるのか、その力を探求する作品や、ユニークな映像表現の試み、ゲストとの対話を通じて、今日の映像表現に関わる視点を紹介するものです。これらの取り組みの記録は、「いま、バリアとはなにか」の報告書にまとめられているほか、メディアテークの機関誌である『ミルフイユ』3号の中でも取り上げていますのでご参照ください。

このたびの震災は、これら3本の10周年事業を検証しつつ、メディアテークと仙台の未来を語り合うはずだったシンポジウム「メディアテークから未来を語る」の、まさに前日に起きました。7階の吊り天井が落下するなど施設の被害は少なくありませんでしたが、幸いけが人もなく、その後頂戴した施設の復活に向けたたくさんの方々からの力強い応援には、この場をお借りして心から御礼申し上げます。思いがけない震災によって、私たちの未来のイメージはすっかり変わってしまったかのようですが、10周年事業を通じて向き合ったさまざまな課題とその解決に向けた道筋の検討は、震災を経ていっそう重要性を増しているのではないかと考えています。

最後になりますが、せんだいメディアテークは地域における創造的で文化的な表現活動のための環境づくりに功績のあった公共施設に与えられる「平成22年度地域創造大賞(総理大臣賞)」を受賞しましたのでご報告します。このような難局においてこそ地域における公共施設の真価が問われることになりますが、わたしたちとしてもこの受賞に恥じないよういっそう努力を重ねてまいりたいと思います。この年報を通じて、メディアテークの多面的な事業を全体としてご理解いただき、生涯学習の振興及び文化活動の支援に関心を寄せておられる多くのかたがたからご意見・ご指導をいただければ幸いです。